【さいばいにっき(ひょうたん編)】
ろくがつに、ひょうたんをうえたよ。
あついひには、はっぱがすぐに、しおれてしまうので、いっしょうけんめい、みずをあげたよ。そしたら、おふぃすの2かいにとどくくらい、おおきくなったんだ。
でも、ひょうたんの、おもしろいかたちの「み」が、ぜんぜんならないんだ。
なんで、ひょうたんの「み」がならないの?
おじいさんに、きいてみたんだ。
おじいさんは「じゅふん」してないからだっていうんだ。
「じゅふん」ってなあに?
それは、たとえれば、✖✖✖みたいなものなんだって。
ふうん。でも、ぼくはこどもだから、いみがわかんないや。
雄花。すいっと丈が長い。
雌花。丈が短く、根元になんとなくひょうたんの形がある。
ひょうたんは夕顔科の植物で、文字通り、夕方から朝にかけて花を開く。
よって、受粉はこの時間帯に、主に蛾を媒体にしてなされる。
昼間に花を開けば、蝶やミツバチが沢山やってくるのに、夜に花を咲かせるものだから、花に寄って来るのは蛾ぐらいなものだ。
だから、人工的に受粉させるのだそうだ。
午後7時位に、ひょうたんの花が咲いた。今がチャンスだ。
雄花をチョキン!雌花にペタン!受粉完了!
これを花が咲くたびに繰り返す。
収穫が楽しみだ。だ。
【火花(完結編)】
→「拳闘編Part3」より続き
「意外と体力ありますね。びっくりです。もっと早くギブアップすると思いました」
初トレーニングの後、ジムのジャグジーに共に入りながらNが言った。
1年間、真面目にトレーニングに励んだ事で、体力には我ながら自信があった。
しかし、慣れない動きをしたので、さすがにバテた。無性に腹が減った。
「飯食いに行こうぜ」
「おごりっすよ」
良い気分だった。
人は「死ぬ」という知性を持ったから、より長く生きられるようになった。
人は「死ぬ」までの時間が無限でないことを知っているから、今を大事に生きようとする。
かつて、私は自分の事を「意思が弱く虚弱な半病人」だと思い込んでいた。だから何事も長続きしなかった。
「やらない正当な理由」を模索し、何かをあきらめていた。
しかし、火花が私を変えた。
友人達が私の背中を押してくれた。
小さな火花が大きな炎に進化した瞬間だった。
CHANGE YOUR BODY.
CHANGE YOUR LIFE.
これは私が汗を流しているGOLD GYMに掲示されているメッセージだ。
「人生において、あなたが後悔していることは?」の問いに、70%の老人が次のように答えた。
「チャレンジしなかったこと」
だから私はGOLD GYMのメッセージに次の一文を付け加えたい。
Don't be afraid of taking on new challenges.
挑戦を恐れるな。
最後に、発火するするきっかけを与えてくれた火花先生と、芸術的な筋肉美で筋トレのモチベーションを維持させてくれたSトレーナー、時に厳しく時に厳しくボクシングのコーチをしてくれたNとSトレーナーに感謝したい。
それから、忘れてはならない。
惜しみない嘲笑をくれた女房にも、ほんの少し感謝している。
火花を起こせ
了
【火花(拳闘編Part3)】
→「拳闘編(Part2)」より続き
ネガティブな予想に反してNは比較的熱心にコーチしてくれた。
「サンドバックを叩いてみましょうか。右ストレートで」
1年間の筋トレで腕力には相当の自信がある。
しかもパンチは「あしたのジョー」で予習済みだ。
Nよ、見ておけ!これが私のパンチだ!
「えぐりこむようにっ、打つべしっ!」
私は思いっきりパンチを繰り出した。
凄まじい破壊力を彷彿させる、激しい打撃音がする・・・
はずだった。
ぼてっ、ぐきっ!
なんとも情けない音。アンド、手首をくじいてしまった。
右手首を抑えて脂汗を流しうずくまる私を、Nは冷ややかに見降ろしている。
「腕力はあまり関係ないんですよ。ちなみに『えぐりこむように』はジャブです」
こんなはずでは・・・
再チャレンジだ。
「えぐりこむようにっ、打つべしっ!」
ぼてっ、ぐきっ!
「えぐりこむように、はジャブですってっ!」
N曰く、拳の芯で標的をとらえていないから手首をくじくのだ。
標的との適切な距離を体が理解していないから、スピードが乗る前に、スピードが落ちた後にヒットする、だから中途半端な音がするのだ。
だから間合いを図るジャブが大事なのだ。なるほど。
鏡の前でのシャドウ4ラウンド。サンドバック4ラウンド。
さすがにバテてきた。
本日の練習は終了!おつかれやした~♪
「仕上げにミット打ちを2ラウンドほどやりましょうか」トレーナーKさんだった。
鬼かっ!
→→「拳闘編(完結編)」へ続く
【火花(拳闘編Part2)】
→「拳闘編Part1」より続き
「ああ、いらっしゃい。Nさんから話は聞いていますよ。トレーナーのKです」
はて?やさしそうなお兄さんだ。他の練習生も和やかな雰囲気の中で練習している。
ダッシュ・アンド・ペンペンヒップの必要はなさそうだ。
「バンテージを巻きましょう。左手をよろしいですか・」
バンテージとはボクサーが拳に巻いている、例の包帯のようなものだ。
Nはリングでシャドウボクシングをしていた。
「あれっ?来ちゃったんですか?」
Nはリングロープに両肘を乗せて不敵な笑みを浮かべ、私を見下ろした。
上気した体から湯気が立ち上っている。
何だろう・・・この思わせぶりな言い方は・・・?
怖っ!
ダッシュ・アンド・ペンペンヒップ戦法は味方であるはずのNに適用することになるのか?
しかし後日、オフィスで必然的に顔を合わせるから、その戦法は完全にブロックされた。
さすがはプロボクサー。
N、恐るべし!
覚悟を決めねばならない。
やるしかない。
→→「拳闘編Part3」へ続く
【火花(拳闘編Part1)】
→「挑戦編」より続き
土曜日。私は馬車道のGOLD GYMの前に居た。
エレベータの前に立ち、ボタンを押すのを躊躇していた。
誰でも最初は緊張するものだ。ましてや、これから足を踏み入れようとしている場所は、目付きの鋭いファイターたちがたむろする場所なのだ。
ええいっ!行ったらぁっ!
気合を入れてエレベーターの↑ボタンを強打した。
【火花(挑戦編)】
→「向上編」より続き
炎は治まったが、まだ熾きの状態でくすぶり続けている。
腹回りがまだまだだな。
シャープさがイマイチだな。
何とかしなければ・・・おおっ!そうだ!
会社の同僚にプロボクサーのNが居るぢゃないか!
ボクシングはダイエット効果がマックス高いという。
そして、Nは別支店のGOLD GYMの会員だ。
是非、教わらなければ。へへっ、ボクシングってヤツをよぉ。
気分はすっかり「あしたのジョー」だ。
しかし、ちょっと待て。
私はNの先輩だし、上司でもある。
「ボクシング教えろや」
と、言えばパワハラになるんじゃないか?しかも、もし私が彼に嫌われていたりしたら・・・
良いチャンスとリングでボコボコにされるんぢゃないだろうか?
刑法35条の正当業務行為を盾に、殺されるんぢゃないか?
下手に出るか?いや!それでは示しがつかないではないか!
ここはフレンドリーに接するべきだろう。
よし。私はNに近づいた。
「ボクシング教えてちょんまげ」
Nはきょとんと私を見ている。クスリとも笑わない。
しまった!フレンドリー過ぎたか?
「じゃあ、土曜日に馬車道のGOLDに来てください」
サンキュウ、Nよ。
お手柔らかにお願い致します。
→→「拳闘編Part1」へ続く
【火花(向上編)】
→「立志編」より続き
加齢による不可避な自然の摂理を否定し、死亡フラグを立てた医師に対して、小さな火花が生じた。
火花は揺らぐ火になり、やがて、炎となった。炎は私の全身を包んだ。
私は火だるま・・・ぢゃなくて、炎の化身と化した。
ジムだ。ジムに行くしかないっ! しかも、
本格的なGOLD GYMだっ!
飲み会が無い日はPM7:30には退社し、ジムに足を運んだ。
1時間の筋トレと20分のランニングを繰り返した。
週に3~5回、多いときは6回通った。
トレーニングが無駄にならないように
私の体はみるみる変化していった。
「良くなってるぢゃないですかっ!」
今年の健康診断の問診で火花先生に褒められた。
診断書を見ると中性脂肪は60%もカットされていた。
脂肪肝も解消され悪玉コレステロールも減っていた。
ジムのトレーナーさんから「食わなきゃ筋肉がデカくならないよ」と言われたので、以前よりむしろ食っている。ただし、無駄なものは極力摂取しないように心がけている。
必然的に栄養学も勉強した。
劇的に変化した自分の体を鏡で見ると、トレーニングのモチベーションが上がる。
週に1回、タンニング・マシーンで体を焼いた。
おおっ!さらに良いぢゃないか!
ややナルシスト傾向が強くなったが、自分が嫌いな人間に向上心が宿るだろうか?
自分を愛し信じる。そして、自分のルールに忠実であること。
これがキクザップだ。
入会者募集の予定は、ございません。
→→「挑戦編」へ続く