【火花(拳闘編Part3)】

  →「拳闘編(Part2)」より続き
ネガティブな予想に反してNは比較的熱心にコーチしてくれた。
「サンドバックを叩いてみましょうか。右ストレートで」
1年間の筋トレで腕力には相当の自信がある。

しかもパンチは「あしたのジョー」で予習済みだ。
Nよ、見ておけ!これが私のパンチだ!

「えぐりこむようにっ、打つべしっ!」
私は思いっきりパンチを繰り出した。
凄まじい破壊力を彷彿させる、激しい打撃音がする・・・
はずだった。
ぼてっ、ぐきっ!
なんとも情けない音。アンド、手首をくじいてしまった。

右手首を抑えて脂汗を流しうずくまる私を、Nは冷ややかに見降ろしている。
「腕力はあまり関係ないんですよ。ちなみに『えぐりこむように』はジャブです」

こんなはずでは・・・

再チャレンジだ。

「えぐりこむようにっ、打つべしっ!」

ぼてっ、ぐきっ!

「えぐりこむように、はジャブですってっ!」


N曰く、拳の芯で標的をとらえていないから手首をくじくのだ。
標的との適切な距離を体が理解していないから、スピードが乗る前に、スピードが落ちた後にヒットする、だから中途半端な音がするのだ。
だから間合いを図るジャブが大事なのだ。なるほど。

鏡の前でのシャドウ4ラウンド。サンドバック4ラウンド。
さすがにバテてきた。

本日の練習は終了!おつかれやした~♪
「仕上げにミット打ちを2ラウンドほどやりましょうか」トレーナーKさんだった。
鬼かっ!

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   →→「拳闘編(完結編)」へ続く