【続エンジニアの足元】

さて、今日は女房がレッドウイングのエンジニアブーツを買ってくるはずだ。
「れっど、れどれど、れっどうい~んぐ♪えんじにあ、ぶぅつぅ~♪」
あまりにも楽しみだったので、歌を作った。
それを口ずさみながらの帰宅だった。
「れっど、れどれど・・・ただいまぁ~!」
あれぇ?女房が居ない。買い物にでも行ったか?まあ、いいや。
さぁて、ブーツはどこだ?今夜は「慣らし」をしなければならない。
いきなり、現場のような過酷な環境に出してしまってはブーツが可愛そうだ。
ブーツには「慣らし」が必要なのだ。浸透力が高いミンクオイルを染込ませて、革を良く揉むのだ。
こうする事で、ブーツは苛酷な環境でも美しく、長く活躍する事になる。
がちゃ!玄関ドアが開く音がした。
あっ!女房が帰ってきた!私のブーツを携えて!
私はダッシュで玄関へ向かった。
「おかえりっ!」
待ってましたっ!女房!
ウェルカムっ!ブーツ!
れっど、れどれど・・・れっどぅぃ・・・
あれぇ?ブーツはどこ?
帰ってきた女房が手に持っているのは、マクダナルズの手提げ袋だ。
夕飯がビックマックなのは判った。しかし、ブーツはどこだ?
私のブーツはどこにあるのだ?
そうか!女房の奴、どこかに隠しているんだな!
じゃじゃ~ん!てな具合で、サプライズを演出したいのだな。
しかし、そのプロセスは不要だ。私は、早くブーツが見たいのだ。
私は回れ右をしてリビングへ向かった。
ここか?
テーブルの下を見た。ブーツは無い。
ここか?
茶箪笥を開いてみた。女房は良くここにスルメを隠している。ブーツは無い。
ここか・・・?
私は冷蔵庫を開けた。こんなところにブーツを隠しているはずは無い。そんな事は・・・判っている。
「何やってるの?」背後から女房の声がした。ぎくりとした。
「いや、ブーツがあるかと思って・・・」私は冷蔵庫の扉を閉めた。
「なんで冷蔵庫の中にブーツがあると、思うわけ?意味わかんねぇ!」
そんなことはわかってるよ!ただ、微かな望みに期待しただけなんだよ!
「あんたねぇ・・・あのブーツいくらするか知ってるの?現場で履く安全靴に・・・4万!5千円も!出せるわけないでしょうがーっ!」
昨日は買ってくれるって言ったじゃないか・・・
「でも、穴の開いた靴じゃ可愛そうだと思って、ブーツは買ってきたよ」
えっ!どこどこどこ?
女房は納戸を開いて包みを出した。
あっ!そんなところに隠してたんだぁ~♪意外~♪(冷蔵庫よりは素直な場所だ)
「展示品で良いから安くしろって交渉したんだよ。レッドウイングじゃ無いけどね」
私は紙袋を開いて中身を確認した。革の匂いがした。たまんねぇ~♪紙袋にブーツの底が引っかかった。もどかしいっ!おりゃー!強引に引っ張ると、紙袋はバリバリと破れてしまった。私はブーツを掌に乗せて、しげしげと観察した。
こ、これはっ!
 
 
写真の説明はありません。
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オオーウっ!「チペワ」じゃねーかー♪!
チペワもUSAの老舗ブーツブランドだ。
姿も「レッドウイング・ショートエンジニアブーツ」に、ほぼ一致する。
「これで、我慢するんだよっ!」
するするっ!しますともっ!十分です!
私は鼻を近づけてブーツの革の匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。
嗚呼!私は果報者です!
ブーツの底の固さを確認しなければならない。踵を頬に強く押し当てた。
嗚呼!硬さもいい~!
私はブーツマニアである。しかし、それで踏まれたいとは思わない系なので、念のため言っておく。
「ちぺ、ちぺちぺ、ちぺわのぶ~つ♪」
歌の出来はイマイチだが、チペワのショート・エンジニアブーツ!明日デヴューです!