【火花(立志編)】

「このままじゃ、心筋梗塞まっしぐらですよ!」

数年前の健康診断で医師に死を予告された。
確かに、当時の私は太っていた。

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「節操なく食ってるわけでもないのに太るのだから、加齢による不可避な、且つ自然な摂理であろう。死亡フラグを立てるとは何事だ」当然の反論に思えた。
「運動しなさいよっ!」
なるほど、もっともな意見だ。
早速、ダンベルを買って自宅でトレーニングを始めた。

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きつい・・・きつすぎる・・・
長年の不摂生がたたり、数回の筋トレ運動でも私の心臓と筋肉は悲鳴をあげた。
エアコンの ↓ ボタンを連打し、部屋の温度を氷点下にした。
ソファに深く腰掛け、首から下げたタオルで額の汗をぬぐった。
ビールだ、あとは冷えた「びいる」があれば完璧に快適だ。
私はびいるへの渇望から、無意識にエアジョッキを握り、口に運んでいた。
その時、部屋のドアが開いた。女房だった。
「寒っ!何この部屋?寒すぎっ!」
氷点下の部屋で、首からタオルを下げて、脂汗を垂れ流しながら、エアビールを飲んでいる自分がとてつもなく滑稽に思えた。
そんな目で俺を見るんぢゃない。
「はいはい、休憩はおしまいですよぉ~♪」
くそうっ!馬鹿にしやがって!今に見てろよっ!
私は立ち上がった。そして、目の前にいる虚像の太った自分に右ストレートを放った。
ペガサス流星拳!

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虚像は無数の氷片となり砕け散った。
   →→「向上編」へ続く