【ぴーちゃん】

夕方、ひょうたんに水を遣っていたら、カミサンからメールが入った。
「我が家にインコがやって参りました~」

 

なにっ?

 

俺に何の相談も無しにインコを買ったのか?
磯野波平なら、ここでこう言うだろう。「ばっかもーんっ!」
しかし、ちょっと待て。
動物好きな二人だが、我が家は共稼ぎ、「ワンたん」や「ぬこ様」に十分なお世話する事もままならない。引退してから飼おうと提案したのは私であった。

 

以前ほどでは無いとしても、私は家を空けることが多い。

女房のやつ・・・寂しかったんだな・・・

私は、女房が一人ぼっちの部屋で頬杖をつき、インコと会話をしている姿を想像し目頭が熱くなった。

よしっ!二人でインコの世話をしようっ!
名前はどうする?
インコといったら「ぴーちゃん」に決まっているではないか。
よしっ!「ぴーちゃん」に決まりっ!

さあっ!家に帰ろうっ!
女房とぴーちゃんが待つ我が家へ!

 

しかし、家に帰るとぴーちゃんの姿は無かった。
代わりに、私の机の上に、小さな、プラスチックの、ガチャポンの景品の、インコのフィギュアが乗っていた。

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「なんでぇ・・・オモチャじゃねえか・・・」
がっかりしたが、不思議と怒りは感じなかった。
ほんの少し、自分は優しくなれた、そんな気がしたからだ。

そして、女房は知らない。
「どっきり」のつもりで買ったインコのフィギュアが、
私の宝物になった事を。