【CAT'S】

「現場を確認して見積もりしてください」
取引先から依頼された現場は横浜の「三ッ池公園」の近くだった。
私はこの公園の駐車所に車を停めて現場に向かった。
現場の確認には30分もかからなかったが、駐車場は終日で¥520の料金だ。30分で出てしまうのも不経済であろう。
「せっかくだから」と私は三ッ池公園を散策することにした。

私は猫が好きである。
そして、散策した三ッ池公園には猫がたくさん住んでいた。
猫好きが、猫に遭遇してしまったのだ。しかも、猫達は人懐っこいときている。
本当はコテコテと撫で回したいところだが、強面のオッサンが目尻を下げて猫をこねくり回していたら、不気味な光景に見えるかもしれない。
そんな訳で、私はささやかな独占欲を満たす為に、出会った猫達に名前を付けてやった。
私が名前をつけた猫達(英語で言うとCAT'Sだ)を紹介しよう。

 

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この子は「スフィンクス」だ。
ただ姿勢がそれに似ていたからだ。それだけだ。30秒後には違う姿勢をしていたが、変更は認めない。おまえは生涯、私から「スフィンクス」と呼ばれるのだ。
「ふふふふふっ!」
ファラオになった気分になり、私は思わず不適な笑みを浮かべた。いい気分だ。

 

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「おおっ!この貫禄!絶妙な角度のヒゲ!ふてぶてしい態度!威風堂々の名にふさわしい!」
わたしはこの子を「ノブナガ」と名づけた。
「本能寺では無念であったな」私はノブナガにそう語りかけた。
そういえば、先ほど妙にのっぺりした顔の白猫が居たっけ。「ミツヒデ」とでも名づけようか?
私は、無精ひげが伸び始めた顎をジョリジョリと撫でながら、思案した。
やがて、ノブナガは大きなあくびをした。そして、グーンと伸びをすると、私の側から離れていった。ノブナガは、丘の裾野に植えられた潅木の隙間に、体をのっそりと滑り込ませ、一言「にあ」と鳴き姿を消した。
「そんな昔の事は忘れたよ」とでも言ったのだろうか?
お見事でござる。

  

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3匹の個性的な猫が池の畔でたむろしていた。
3匹は座って何かを話し合っているようだったが、猫語だったので理解できなかった。
「座・ALFEE」と名づけよう。オリジナルは「ジ」だから著作権?(商標権?)には抵触しないだろう。「ザ」を漢字で「座」としたところも、文法上の誤りを回避する・・・
めんどくさいので「ザールフィー・ズ」とした。

うっかり、長居をしてしまった。公園の雑木林の間から見える日は傾きかけていた。
さて、会社に帰ろう。
これで俺様は帰ります。みんな、元気でな。
「・・・  (´;ω;`)」
いかんっ!また俺様の悪い癖が出てしまったっ!
名前を付けてしまったので、愛情が沸いてしまったではないかーっ!

 

つらい別れであった。